最近、AIエージェント企業のSierra(シエラ)に関するニュースを見て、非常に興味深いと感じました。
Sierra(シエラ)は、元Salesforce共同CEOのBret Taylor氏と、元Google幹部のClay Bavor氏が立ち上げたAI企業です。主に大企業向けに、カスタマーサポートや顧客対応を行うAIエージェントを提供しています。
2026年5月には、Sierraが9.5億ドルを調達し、評価額が150億ドルを超えたことが発表されました。Sierra公式の発表によると、Tiger GlobalとGVが主導した資金調達で、同社はAIによる顧客体験のグローバルスタンダードを目指すとしています。
参考:
Sierra公式発表:Better customer experiences. Built on Sierra
TechCrunch:Sierra raises $950M as the race to own enterprise AI gets serious
CMSWire:Sierra Raises $950M at $15B Valuation
Sierra公式の記事では、数年前には4社のデザインパートナーから始まった同社が、現在ではFortune 50の40%以上にサービスを提供し、住宅ローンの借り換え、保険請求処理、商品の返品、寄付支援など、数十億件規模の顧客対応をAIエージェントで処理していると説明されています。
最初は「問い合わせ対応」「注文状況の確認」「パスワードリセット」といった、いわゆるカスタマーサポート領域が中心だったようですが、現在はそこから大きく広がっています。
保険、住宅ローン、銀行、医療、通信、小売など、各業界の業務プロセスに入り込み、AIエージェントが単なるチャットボットではなく、実際の業務処理を担う存在になりつつあります。
ここが非常に重要だと思っています。
つまり、Sierraがやっていることは「AIチャットボットを売っている」というより、企業の業務プロセスの一部をAIで置き換え、成果を出す仕組みを提供しているということです。
ツール提供ではなく成果を出す
私は、この流れは今後の業務システム開発において非常に大きな意味を持つと感じています。
これまでのSaaSは、基本的には「ツールを提供する」ものでした。
CRM、予約管理、在庫管理、問い合わせ管理、勤怠管理、請求管理など、さまざまな業務に対して汎用的なツールが提供され、企業はそれを自社の業務に合わせて使ってきました。
しかし、AIエージェントの時代になると、単に「画面を用意して、ユーザーが入力する」だけではなくなります。
AIが業務内容を理解し、必要な情報を集め、判断を補助し、ときには処理まで実行するようになります。
そうなると、価値の中心は「機能があること」ではなく、「業務上の成果が出ること」に移っていくはずです。
Sierraが面白いのは、まさにこの方向に進んでいる点です。
アウトカムベース課金の魅力と難しさ
同社は「アウトカムベース課金」という考え方も提示しています。これは、従来のようにユーザー数や利用量に応じて課金するのではなく、AIエージェントが実際に成果を出したときに課金するという考え方です。
参考:
Sierra公式:Outcome-based pricing for AI agents
たとえば、サポートの問い合わせをAIが解決した、解約を防いだ、アップセルにつながった、購入につながった、といった具体的な成果に対して課金するイメージです。
これは非常に魅力的な考え方です。
なぜなら、提供側と顧客側のインセンティブが一致するからです。
従来のSaaSでは、極端に言えば、導入したツールが実際に使われていなくても、契約している限り月額費用が発生します。提供側としては、ライセンス数や契約金額が増えれば売上が増えますが、それが必ずしも顧客の成果と直結するとは限りません。
一方で、アウトカムベース課金では、成果が出なければ売上になりません。逆に、成果が出れば顧客にもメリットがあり、提供側にも売上が発生します。
これはAIエージェントのように、実際に業務を代行・補助するサービスとは非常に相性が良いと思います。
ただし、現実にはかなり難しい部分もあります。
何を「成果」と定義するのか。
その成果が本当にAIによって生まれたものなのか。
どの時点で課金対象とするのか。
成果の測定方法をどうするのか。
契約書上、どう明文化するのか。
このあたりを曖昧にすると、後からトラブルになる可能性があります。
そのため、私たちが今すぐ完全な成果報酬型に移行するのは、まだ早いと考えています。
ただし、将来的には非常に重要な方向性だと思っています。
中小企業向けの専用SaaS
Sierra(シエラ)が大企業向けに支援をしているのとは異なり、
私たちCitrus Appでは、「中小企業向けの専用SaaS」という形に力を入れていきたいと考えています。
これは、既存の汎用SaaSをそのまま導入するのではなく、それぞれの会社の業務に完全に合わせて、専用の業務システムを月額制で提供するという考え方です。
たとえば、問い合わせ管理、案件管理、見積管理、請求管理、在庫管理、日報管理、顧客管理など、中小企業には会社ごとに細かく異なる業務フローがあります。
既存のSaaSに業務を合わせることもできますが、現場の運用と微妙に合わず、結局Excelやスプレッドシート、LINE、メール、紙の運用が残ってしまうことの方が多いのではないでしょうか。
そこで、最初からその会社の業務に合わせた専用システムを作る。
ただし、従来のスクラッチ開発のように数百万円、数千万円の初期費用をかけるのではなく、AIを活用した開発によって初期コストを抑え、月額制で継続的に改善していく。
これが、私たちが考えている専用SaaSの方向性です。
Sierraが大企業向けに行っていることを、私たちは中小企業向けにやりたいと考えています。
もちろん、Sierraのように大規模なAIエージェント基盤を提供するわけではありません。対象となる企業規模も、予算感も、必要な機能もまったく違います。
しかし、根本にある考え方は近いと思っています。
つまり、
「ソフトウェアを納品して終わり」ではなく、
「業務に入り込み、成果が出る仕組みを継続的に作る」
ということです。
これからの業務システム開発は、単に画面や機能を作るだけでは価値が出にくくなると思います。
AIによって開発スピードが上がる一方で、本当に重要になるのは、現場の業務を理解し、どこを自動化すべきか、どこを人間が判断すべきか、どのデータを蓄積すべきか、どの指標を改善すべきかを設計する力です。
その意味で、開発会社の役割も変わっていくと思います。
単なる受託開発会社ではなく、業務改善のパートナーに近づいていく必要があります。
私たちとしては、当面は月額固定の専用SaaSという形で提供していく予定です。
予算の少ない中小企業に対し、初期費用がかからない、かつ専用SaaSを提供する。
これによりこれまでは予算がなくてできなかったことが中小企業で実現できるようになる。
わくわくしますね。この2026年は圧倒的にDXが加速する年になるはずです。
